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それというのも、子どもの頃、まさしくこのお家にネコがいたのだ。
伊緒さんが保護した子ニャーと同じ茶トラで、コロという名前だった。
とっても仲良しだったけど、ある日コロは姿を消してしまった。
来る日も来る日もコロを待ったのに、とうとう帰ってくることはなかった。
だから、さっき伊緒さんが子ニャーを抱きかかえてきたとき、ああ、コロがこのお家に戻ってきたんだと思ったのだった。
子どもの姿になって、ひよひよふるふると戻ってきたんだと。
心配された子ニャーの体調は、なんとか大丈夫そうだ。ゼリー状のフードをいたく気に入って、うにゃーふ、うにゃーふと言いながら夢中で食べている。
「これー、ゆっくり食べれー!」
伊緒さんは喜んで、タオルで子ニャーの濡れた毛を拭いてあげながら、しきりに話しかけている。
きっとお母さんネコにグルーミングしてもらっているような気分に違いない。
「ノミよけとか、混合ワクチンとか色々必要ですから、近いうちに一緒に動物病院につれていきましょう」
つまりはこの子をうちで育てましょうという宣言を理解した伊緒さんは、はわはわはわと打ち震えて、ぎゅうっと子ニャーを抱きしめた。
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