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このときばかりは、自分の思慮の浅さにへこんでしまいました。
困った困ったと思っていると、通りがかった夫が、
「なにやらお困りのようですが……」
と、やさしく声をかけてくれました。
これでもなるべく顔に出さないように心がけているつもりなのですが、わたしは夫いわく、
「困ると"ミッフィー"みたいな顔になる」
そうです。
マンガにすると口のあたりがバッテンになっているのかもしれません。
ようするに、結局ヘンな困り顔をしているのでしょう。
かくかくしかじか、というわたしの情けない経緯を、夫はうんうんと頷きながら聞いてくれました。
そしてひと通り聞き終えると、おもむろにこう言ったのです。
「事情はよく分かりました。行こうじゃないですか、取材に!」
かくしてわたしは、お寿司屋さんのカウンターに、夫と並んで座ることになったのです。
えらいことになったと、内心気が気ではありません。
彼が連れてきてくれたのは、紛うことなき本格派の、回っていないお寿司のお店です。
こういうお店はもちろん自分で入ったことなんてありません。
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