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思わず漏れ出た言葉に、夫も職人さんも笑って応えてくれました。
「さあ、後半は江戸前になります」
今度は素材にひと手間加えた、パンチのあるお寿司の登場です。
ふっくりした煮穴子や、軽く酢〆にしたアジなど、わたしには珍しい食材のオンパレードです。
また、特に加工しないネタでも、甘辛いタレを塗って出してくれるのも面白く感じました。
これが「煮詰め」というものなんですね。
わたしは特に、生の赤貝に煮詰めを塗ったものがすごく気に入ってしまいました。
「あ……ご飯の色が、違う……?」
お恥ずかしいことに、食べるのに夢中でシャリの色が関西風と異なることになかなか気づきませんでした。
聞くと、このお店では江戸前のネタの味付けに負けないよう、赤酢のシャリを使うとのことでした。
うーん、繊細な気くばりに感じ入るばかりです。
「握りはこれで最後になります。東と西の横綱を、食べ比べてみてください」
そう言って一貫ずつ並べて出してくれたのは、有名なまぐろのヅケと、薄い膜のようなものをまとった長方形の鯖寿司でした。
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