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伊緒さんは寝ているコロをやさしくなでたり、ピンクのお鼻とへの字口の接点を観察したりしていたが、ふと外から聞こえてくる音に耳をそばだてた。
「晃くん、なんだろこの音。どこかで聞いたような……」
まさか……この曲は……"石焼き芋"……!?
ぼくも耳を澄ますとたしかに、
~♪はにゃわー・わ・わん
と、「~♪いしやーき・い・も」のリズムで何やらスピーカーから歌が流れているのが聞こえてくる。
しかし、ばかな……!
いまは真夏の昼下がりだぞ……!!
みたいな顔で、伊緒さんがはわはわと緊迫している。
でもでも、関西では真夏に焼き芋って普通なんだべか。
でもでも……。おじさん、暑いんでないかい?
そんなことを思っているであろう彼女の心配をよそに、ぼくは久しぶりに聞くその音にすっかり嬉しくなってしまった。
ああ、なつかしい!"アレ"がやってきたんだな!
「伊緒さん、ちょっとのぞきにいきませんか。外はあっついから、帽子でもかぶってくださいね」
かくして白いワンピースに大きな麦わら帽子という、夏休みのこどもみたいな姿の伊緒さんと炎天のもとへと踏み出した。
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