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食べ物の味を例えるのにそういった表現があることにも感心したし、何より旦さんの終始堂々とした神のごとき振る舞いに、画面越しにも圧倒されたのだった。
――オトナの男というのは、こうでなくっちゃいけない。
それ以来、ぼくの心には「天ぷら屋さん」がオトナの階段の重要なステップとして刻み込まれてしまったのだった。
そして時は移ろい、ぼくは年齢だけは言い訳できないくらい大人になった。
ところがまだまだ当然のごとく、あの旦さんのようにはいくわけがない。
オトナの階段は一段一段が高くて急で、もうそんなに上らなくてもいいんじゃねえかニャー、みたいな気持ちになってくる。
しかし!しかしです!
会社の帰りに偶然、お手ごろ価格で天ぷらを食べさせてくれるお店を発見してしまった。
ちょっといいめの定食くらいのご予算なのに、カウンター席の目の前で揚げたそばから出してくれるのだという。
「これだ・・・!」
そう思ったぼくは、ある日伊緒さんをお誘いしてそのお店へとトコトコ出かけていったのだ。
こういうのは、明日はお休みという金曜の夜がいい。
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