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どんなに手際よく箱に詰めていっても、それを上回るペースでどんどん柿が流れてくるので、やがてはコンベアからオーバーフローするという大変な事態に陥ってしまう。
いよいよ限界かと思われた頃を見計らい、ライン長が赤いボタンを押すと「ヴヴーッ」とブザーが鳴り響き、しばしの間ベルトコンベアが停止するのだ。
ほっとするのも束の間、
「なに止めとるんでよお!ゴルァァァ!」
と前工程から特大の雷が落ちてくる。
再び動き出したコンベアには、さらにたくさんの3L柿が流れてくるのは言うまでもない。
ぼくはバイト期間中、毎夜のように柿の夢にうなされ、したがって柿というフルーツそのものから距離をおくようになってしまったのだった。
さて、ぼくにとってはあまりにも身近過ぎる柿だけど、伊緒さんはこの果物が大好きだった。
彼女のふるさとである北海道では、気候上の理由から柿が自生しないとされていて、じつはとってもレアなフルーツなのだ。
「すごい!日本昔ばなしみたい!」
初めて柿の実が木に生っている様子を"生"で見た伊緒さんは、はわはわと打ち震え、その夜は興奮してなかなか寝付かれなかったらしい。
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