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柿はもともと大陸からもたらされた植物と考えられており、弥生時代の遺跡から種子が検出されている。
渋柿でも干せば甘くなるし、和傘などの防水剤となる「柿渋」をとることもできる。
木そのものも硬くて緻密なので、細工物の飾りに使用される。
正倉院御物である奈良時代の琵琶に、「黒柿」の材が用いられていることも有名だ。
そして葉っぱもお茶にしたり、若葉なら天ぷらにしたりと、じつはまったくあますところのないえらい植物なのだ。
さんざん苦手感をアピールしておきながらなんなんだけど、ぼくにも柿にまつわる郷土の誇りみたいなものがひとつある。
それは「柿の葉寿司」。
柿の葉をネタにしたお寿司、ではなくって、酢〆にした鯖を使った押し寿司の一種だ。
鯖をのっけた酢飯をひとつずつ柿の葉で包んで、型枠にきっちり並べて重しをすると直方体の寿司ができあがる。
食べるときは柿の葉を剥くのが一般的だけど、甘くて青い独特の香りがついて、それは爽やかでおいしいものだ。
この柿の葉寿司は見事に伊緒さんの心をわしづかみにし、以来彼女の大好物となった。
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