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柿の葉寿司の歴史には諸説あるが、関西では江戸時代半ば頃の吉野地方が発祥とされている。
桜で有名な吉野は山深い地で、海の魚はたいへんなごちそうだった。
材木の流通などを通じて交流のあった熊野地方などからもたらされる塩鯖は、とても貴重な食べ物だったのだ。
強く塩あてした鯖はそのままでは辛すぎるため、薄く削いで握り飯にのせ、手近な柿の葉で包んで保存したのが柿の葉寿司の原型だといわれている。
重しをして発酵を促す、いわゆる「なれ寿司」の一種で、かつてはお祭りの日には各家庭でつくられたという。
吉野に発する柿の葉寿司は川伝いに和歌山にも伝わり、ぼくの育った紀北地方でも名物となっている。
奈良から和歌山にかけての主要な鉄道駅には柿の葉寿司の店舗が入っていて、おみやげやお弁当として不動の人気を誇っているのだ。
伊緒さんが初めて柿の葉寿司を口にしたのも、そんな奈良行きの列車でのことだった。
古めかしい向かい合わせのボックス席で包みを解くと、葉っぱの個包装をおもしろがってキャッキャと喜んでくれている。
具は鯖がもっとも伝統的だけど、鮭もおいしいし椎茸を甘く炊いたものもよく合う。
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