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それが料理を始めるときの、祖母とわたしの合言葉でした。
料理のレシピ、ということに関しては、実は祖母から手とり足とり教わったわけではありません。
食材によって違う下ごしらえの方法、同じ材料でも切り方ひとつで食感が変化すること、お肉と野菜を炒めるときの順番等々、料理の原則になることをていねいにていねいに教えてくれたのです。
また、包丁を洗ったら刃の根元までしっかり水気を拭いて柄もきれいにすること、調理の合間にこまめに洗い物をしてシンクにものをためないこと、食材はきっちり使い切って決して無駄にしないことなども、大事なしつけだったと今になって思います。
「どんなにおいしいものつくってもねえ、食べる人が元気なかったり、そのときのおなか具合に合わなかったりしたら気の毒だからねえ。食べさせたい相手のことを、よおく見てメニューを考えるんだよう」
祖母のこの言葉は、料理の極意みたいなものだと思います。
でも、"塩少々"の本当の意味がわかったのはもっとずっと後、わたしに大切な人ができて、心の底からおいしいものを食べさせたいと思うようになってからでした。
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