おばあちゃんのレシピ帳。少女時代の伊緒さんと、お料理の先生

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 わたしも笑って、 「おーけー!」  と、幼かったあのころみたいな返事をしました。  それが、元気な祖母と交わした、最後の言葉でした。  祖母の葬儀のとき、すごく麗らかな日和だったことだけは、今でもよく覚えています。  少しずつ、ごく自然に身体が弱っていった祖母は、本当に眠るように息を引き取ったそうです。  わたしはもう17歳になっていましたが、祖母がいないということの意味がよく分からず、葬儀の間もただぼんやりしていました。  生前の祖母の強い希望で、葬儀はあの樹がたくさん生えているお家で行われました。  たくさんの花に囲まれて、穏やかな顔で眠る祖母はとてもきれいで、むしろ何か特別なお祭りでも行われているかのようでした。  何もかも終わって参列の人も帰り、わたしは母と二人きりになりました。  すごく久しぶりに会うような気がする母は、泣きはらした目をしていました。  でもその顔は、若い頃の祖母の写真と瓜二つです。  そしてその面影は、どうしようもなくしっかりとわたしにも受け継がれているのでした。
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