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そんな勇士は男連中からやっかみ半分に崇拝され、休み明けには取り囲まれて「にくきゅう」の形にしたパンチで小突き回されるのだ。
これを英雄といわずして何と言おう。
ずーっとモテたためしのないぼくは、当時もちろんそういった話題には蚊帳の外で、ある種平和な心持ちですらあったといえる。
でも、でも。
ぶっちゃけ羨ましくないはずがない。
彼女を連れて夏祭りに行きたい!
モテない男の子なら誰しも、そんな魂の叫びをぐっと呑み込んでいるはずだ。
でも、こういうのもやっぱり風情だったりするんですよねえ。
青春時代の苦酸っぱい思い出を胸に、すっかりおじさんになったぼくはお祭り会場最寄りの駅に降り立った。
ここに来るのはもう、じつに久方ぶりだ。
今日はお仕事だったのだけど、ものすごく久しぶりなこともあって花火でも見ましょうと、伊緒さんと待ち合わせているのだった。
構内はどわっと人でごった返し、色とりどりの浴衣を着込んだ女の子がいっぱいで、まるで変わり咲きの朝顔市みたいだ。
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