"ピッツァ"は"ピザ"のオサレな言い方…ではないんですって?

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 食べ進めると手元のほうはさくさくパリパリとした食感で、薪火の匂いがさらに食欲を刺激する。  ぼくたちは「おいひい!おいひい!」と騒ぎながら、もうひとつのペスカトーレにも手をのばす。  "漁師風"という意味の海鮮具材はパスタでも同様で、エビやイカ、アサリやムール貝がふんだんにのっかった豪華な一品だ。  魚介のエキスと一体になったトマトソースは海の風味をたたえ、圧倒的な旨みとなって押し寄せる。 「このお店はご夫婦でされていてね、ローマ風の薄くてさくさくのピッツァにこだわってるの。"ピッツァ"はイタリアでの呼び方、"ピザ"はアメリカのイタリア系移民が広めた、厚手でふわふわのやつのことだそうよ」  そうなんだ。  瑠依さんの解説で初めて知った。  ではではピッツァといっても決して気取った言葉というわけではないのですね。 「お味はいかがでしたか」  ふいに調理服姿の年配の男女が、にこやかに声を掛けてきた。  このお二人が店主ご夫妻で、ぼくと伊緒さんが口々に喝采するのをはにかむように受け止めた。
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