浴槽人魚

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浴槽人魚

 ある嵐の夜のこと、空を泳ぐ人魚と出会った。  人魚は嵐の夜に大空を泳ぎ渡る珍しい種族の者だった。  しかし若い人魚はいつの間にか群れの仲間とはぐれ、それ以外仲間を探す旅をしているという。  嵐は過ぎつつあり、やがて朝も来る。人魚が宙を泳ぐことができる刻限は近かった。  とあるお人好しは、目の前の不思議な出来事に驚くも、お人好しなので、アパートの自室の浴槽を貸すことを申し出て、人魚はその申し出に二つ返事で、次の嵐の夜までと条件を添えて、申し出を受けた。  そうして、奇妙な二人組の奇妙な同居生活が始まったのだ。――これはそんなふたりのある日の出来事である。
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