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1.どこ?
[リッキー! リッキー!!]
[フェル! フェル!]
一際背の高いフェルが人波の向こうで俺を呼んでいるのが見える。俺も手を伸ばす、声を張り上げる。
[フェル! フェル!!]
[どこだ? リッキー、どこだ?]
[ここだよ! ここだ、フェル!!]
一生懸命に手を振る、背を伸ばす。両手を突き出してフェルに手を振る。フェルが横を向く、後ろを向く、こっちを向く。
[リッキー、どこ? リッキー!]
[ここ! ここにいるよ! ここだ、見てよ! 俺、ここにいる!!]
「リッキー! リッキー、どうした!?」
ハッと目が覚めた。ひどい汗…ひどい動悸……目の前にいるフェルの顔を触って触って触って、そして抱きついた。
「どうした? 震えてる……」
「怖い……夢、見た……」
フェルの大きな手が撫でてくれる、抱き返してくれる。
「帰ってきたばかりだ、まだ落ち着かないんだよ」
「……うん……」
「まだ早いよ。もう少し寝たら? ちょっと待ってて」
ベッドを抜け出したフェルが寝室を出て行った。トン、トン、トン……杖を突く音が遠ざかる。
(フェル……フェル!)
なんだか怖い、もう帰って来ないんじゃないか…… すぐに寝室に戻って来たフェルがベッドに来るまで息をつめていた。
トン、トン、トン……近づいてくる杖の音。
「ほら、着替えとタオル。拭いてあげるから着替えて」
サッパリとしてもらって胸に抱かれた。
「もう怖い夢なんか見ないよ。僕が眠るまでこうしてるから」
優しい心臓の音が聞こえる……繰り返し聞いていると波の音に聞こえてきた。
(ああ……フェル……お前はここに、俺のそばにいるんだ……)
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