114人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
「エディは?」
「僕は卒業したらカリフォルニア大学の大学院に移籍するよ。国際政治学を勉強したくてね。将来は教授職に就くと思う」
「教授かぁ……」
レイが素っ頓狂な声を上げた。
「卒業しても、まだ勉強したいなんて俺には真似できないよ!」
「きっかけはね、辛いかもしれないけどリッキーの母国の一件なんだ。あの時いろんなことを調べて、世界情勢に関わっていきたいと思ったよ」
「それ、エディにぴったりだ!」
リッキーの言う通り、エディには天職かもしれない。
「シェリー、君はどうするの? なにか考えている?」
僕はシェリーに幸せになって欲しい。エディと結婚する道を取るのだろうか。
「私ね、エディと同じ道に進むわ。二人で一緒に勉強してその研究をしていくつもりなの」
「そしていつか結婚?」
「フェル、それはまだ先の話だよ。一緒に過ごすことが今より増えるだろう。その中で真剣に考えていきたいと思ってるよ」
「私もそう思ってる」
「シェリーが納得してるなら僕は応援するよ。エディ、シェリーを頼むよ」
「大丈夫。彼女はしっかりしているからね」
エディが微笑む。僕はもうシェリーの心配は要らないと思った。エディは確かな人物だ。安心して大事な姉を任せられる。
その後はみんなで将来のことについていろんな話をした。5年後はどうなっているか、10年後はどうなっているか、そんな話を。
今度母さんの所に報告に行くつもりだ。ビリーは驚くだろうな。母さんとジェフ、グランパたちは喜んでくれるだろう。『放蕩息子たち』、そんな僕らが生き方を定めた。
僕らはこの二年余りを思い返す。なんて激動の嵐だっただろう! こうやってリッキーと一緒に人生を歩むようになるなんて、あの頃の僕には想像もできなかった。ただ目の前の時間を生きていくのに精いっぱいだった。リッキーと愛し合ってさえ、一時期は『死』さえも胸に抱え込んで、先の見えない道を駆け抜けた。
「リッキー……ありがとう、僕にいろんなことを教えてくれて」
「え、俺何も教えてないよ」
「ううん、生き方を教えてくれたよ。生きて行く上でなにが大事なのかもね。リッキーがいなかったら僕の人生はきっと味気なくていまだに目標なんて見えてなかったと思う。リッキーが僕の未来を作り出してくれたんだ」
「それを言ったら、フェル、お前こそ俺の未来を切り開いてくれた…… 俺なんかきっとぼんやりとセックスの中に溺れてたよ。俺にはこんな人生なんか縁がなかったと思う。なにもかもフェルがいたから俺……」
リッキーの頬に涙が伝う。
「俺さ! うんと勉強するよ! フェルの足手まといにはなんねぇんだ。いい相棒になる。肩を並べて生きていく、依存するんじゃなくて、従属するんじゃなくて。俺の道がフェルの道の真横を通ってるんだ」
そうだね。互いに足を揃えて歩いていく。相手に寄り掛かることなく、でも助け合って。
――Estare contigo para siempre.
『おまえとずっと一緒にいるよ』
――Mi corazon es tuyo.
『俺の心はお前のもの』
『たとえ死が二人を分かつとも、なお途切れぬ愛情がこの結婚にある。あなたと共に生涯を歩き、支え合う。あなたにこれを誓います』
リッキー、愛してるよ。これからもずっとそれは変わらない。僕らは手を取り合って生きていくんだ。
(第6部 完)
――「フェルリキシリーズ」完結――
最初のコメントを投稿しよう!