10.Happy Birthday !!!

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 閉まったドアの前に突っ立ってる俺をフェルがいきなり抱きかかえた。 「フェル! 足、痛いのに!」 「お前抱えるのくらい、どうってことないよ」  部屋の真ん中まで来て、フェルが口づけてくるから俺はそっと口を開いた。両手をフェルの首に回す。  しっとりと唇を舐められて、今度は入って来た舌が俺を翻弄する……喘ぐ俺をそれでもフェルは離さない。 「……ふぇ……いき……」  口の中を貪るフェルにとうとう言った。 「……por faver……」  口を離されてドキドキする鼓動を落ち着かせようとするのに、今度はフェルの舌が俺の首筋を舐め下ろしていく…… 「っはっ……ぁぁ……や……」  フェルが歩くのを感じる、けど俺への愛撫がやまない。感じて、感じて、ポワポワして……ベッドに下ろされて耳元で囁かれた。 「濡れてる?」  俺は何度も頷いた。 「さわって……ふぇる、さわって……」  なのに俺はとんでもないセリフを聞かされた。 「後でね。さ、食事に行こうか!」  はぁぁぁ??  呆気に取られた俺に背を向けて着替え出すフェル。あっという間にスーツ姿になって「どうしたの?」なんて聞くから俺は殴り倒してやろうと起き上がった。 「なに?」 「お前さ! 男が発射寸前に止められると思ってんのか!?」 「おい、下品なこと言うなよ。仮にも俺の奥さまだぞ」 「仮ってなんだ!? 仮って! それに俺は奥さんだけど男なんだからな! 出そうになってんのに食事だ!?」  不思議そうにしてたフェルがにこっと笑ってそばに来た。俺はこれ幸いとグッと握りこぶしを作った。不意打ちならきっとフェルに負けねぇ。  なのに予測してるみたいに腕を掴まれてまたキスをもらっちまった。呆気ない俺……フェルに振り回されっ放しだ…… 「むふっ……んん……っ」  すぐ陥落しちまって「行こうか?」って言われて頷いちまった。勃ちかけてる俺のを触ってにこっと笑った。 「ここが濡れてんならシャワー浴びといで。服、出しとくから」  俺はフェルの言う、『貞淑な妻』ってヤツになった。大人しくバスルームに行ったんだ。  出てくるとベッドの上に俺の着るもんが並べてあった。  鏡の中の俺。コバルト・バイオレットのスーツにアザリアっていうピンク系のバイオレットのスタンドカラー。それにゴールドのチェーンが揺れている。左の手首にフェルにもらった香水をそっと吹きつける。  フェルの着てんのは、ドーン・ミストっていうグレー系のスーツにエアウェイ・ブルーのワイシャツ。タイはスーツとおんなじドーン・ミストにオメガ・ブルーのストライプが入ってる。  もう俺の髪はたっぷり長くなっていて、肩にほんのちょっとつく。フェルのお好みの右側だけ耳にかけるスタイルで、右耳にチェーンに合わせて小っちゃな丸いゴールドのピアスをしてある。  右側のピアスって、守られる女性って意味だ。俺は自分にフェルを守る確固たる意志を持ってるけど、可愛い妻になるためには右がいいなって思ったんだ。   
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