114人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
声が唸るように低く響く。
「外で話し合おうじゃないか」
すげぇ勢いで出てった男はこっちを振り向きもしなかった。たとえどっかの通りで出会っても、声なんかかけて来ないと思う。
「リッキー」
「なに?」
「どんな顔、あいつに見せたの?」
「え?」
「どんな顔?」
ヤバい、怒ってる?
「俺、何もしてねぇよ。お前を待ってただけだよ」
嫉妬に狂った目で見てるフェルに、怖いのと、ゾクゾクするのと。
「お前に恥じることしてねぇから。お前が戻んの遅かったら俺が蹴り上げてる」
俺のメラメラしてる目にフェルの怒りが治まっていく。
「ごめん。僕のリッキーだもんな。お前に迫ってるアイツを見たらカッとなっちゃったんだ」
「こんなとこで暴力沙汰は御免だかんな」
「悪かったよ、リッキー」
手を差し出すからそれを握って立ち上がった。ほっぺにキスもらったから俺は頷いて許してやった。
「少し散歩しようか」
当たり前のように差し出してくる腕に、俺も当たり前のように自分の腕を預ける。
外に出るんならちょっと寒いんじゃねぇか? って思った。だってこの季節の川のそば。コートも着ねぇで外に出たらアッチまでガチガチになっちまう。あ、ガッチガチってのは寒くてってことだ、決して寒さに感じちまうわけじゃねぇ。
けど、外じゃなくって、エレベーターを上がって一番上にある展望台につれて行かれた。
最初のコメントを投稿しよう!