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その夜、暖炉の前で俺たちは静かに愛し合った。なんていうか……声を出すのがもったいない、そう感じたんだ。そういうんじゃなくて暖炉の火みたいに愛し合いたかった。
暖炉って不思議だ。見ても見ても見飽きない。それは普通の火とはまるで違うんだ。包んでくれる、そんな暖かさがあるんだ。フェルも同じ気持ちなんだろう。何も言わない。自分の来てるもんをラグの上に広げてそこに抱きしめた俺をゆっくりと横に倒していく。
『言葉なんて要らないよな』
そんな声が聞こえたような気がした。俺は頷いたんだ、ほんの少し微笑んで。俺たちの間はそんなもんでいい。
(フェルがいればいいんだ)
返事が聞こえるようなキスをされる。
(僕にはリッキーがいるよ)
互いにゆっくり心の中でいろんな会話をした。
時々、はっ と喘ぐ。キスがくる、激しくないヤツ。甘くて穏やかで、動く手も優しくて、俺もフェルを触って、互いにゆっくり熱くなっていく。
そうだ、こんなセックス、あん時したよな。アルのこと喋った時だ。グランパのあの離れで。あの時こんなだった。
空気が
温度が
そしてフェルが包んでくれて
強くない快感は俺をゆったりと漂わせてくれて
ああ
一人じゃない
ずっとずっと ずっと一緒なんだよな
俺は何を怖がってたんだろう?
離れないんだ、俺たちは
距離の問題なんかじゃない
もし今、二人の未来を考えるなら
だったら怖くなんかないはずなんだ
フェル、そうだろ?
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