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けど、結局クリスマスでさえ気づかなかったんだけど。
ホントにフェルの中に『記念日』ってのは無いんだ。だから俺は気にすんのを止めた。諦めって言うのとは違う。だってフェルが俺を愛してるってのは間違いねぇんだから。
フェルは今日は講義が終わんの、遅いんだ。
俺はフェルが忘れてることを想定して、それなりのご馳走を作った。フェルの好きなもんのオンパレードだ。
フェルが何度も作ってくれって言ってたトマトのデザートも4つ作った。1つが俺の。3つがフェルのだ。トマトとチキンの例のシチュー。羊肉のバジル焼き。サラダは何が何でもこれを全部食べさせるって決めてるたっぷりのハーブサラダ。
服はワイン色のあのブラウスとパンツだ。髪は何回もブラッシングして、いつもよりさらさらにしてある。
イヤだって言ったって、今夜は抱いてもらうんだ。
ノックがあった。
(誰だろう、今日は客は困る)
そう思いながら俺はドアを開けた。
「奥さま。マイエンジェル。これをどうぞ」
フェルだった! 両手でやっと持てるほどの真っ赤なバラ……
「フェル……忘れ……なかったの?」
「約束したからね。忘れなかったよ、頑張って」
思うことはおんなじだった。フェルのカッコはあの青いスーツだった…
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