9.助けて……くれ……

6/14
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
  「命に係わるんだよ、リッキー……」  重かった、その言葉が。 「今は? 今どうしてるんだ、フェルは」 「睡眠薬で眠らせた」 「今の兆候は?」 「飯、食わなくなり始めた。必死に体動かして水飲んでる。でもあんだけ勉強してんのに俺より成績下がった。さっき眠る前に……もう限界だって言ってた……」  顔を上げたタイラーには表情が無くって、俺は怖くなった。 「フェルを外に出すな。寝室からもバスルーム以外は行かせちゃだめだ。自殺願望が強く働く。それで叔父は死んだ」 「え!?」 「そうなんだよ、死にたくなるんだ、止められない。だから部屋から出しちゃいけない。ヤクからも普通にやってちゃ抜けるなんて不可能だ。外と遮断しなきゃだめだ」  ミッチのとこでも地下から出さなかった。 「俺と交代で見張ろう。講義があるから留守になるだろ? 誰もいないのはまずい」 「でも俺とタイラーだけじゃ無理だ」 「僕もいるよ。でもそれでも人は足りない」  二人が俺を見た。そんなこと……そんなこと、出来ねぇ! 「みんなに話すなんて無理だ! エディとタイラーくらいなもんだ、こんなの受け入れてくれるなんて!」 「リッキー、もう手段を選べないところまで来ている。俺は叔父を見てきたから分かる。金が入ればどんなことをしてでもヤクを手に入れる」 「フェルはそんなこと、しねぇ!」 「みんなそう思うんだよ。本人でさえそう思う、自分は強いはずだ、乗り切れるってね。そのうち負けるんだ、一回だけ。一回だけでいいから。後は止めるから。そして、終わる」 ――そして、終わる 「フェルがああなったのは……俺のせいだ……俺がフェルを壊した……」 「リッキー、もう泣いてるヒマもないんだ。後悔しているヒマも。お前にフェルが限界だと言ったんなら、それはもう本当に限界なんだ。フェルはお前に弱音なんか吐かないんだから」  その通りだ……どんなに苦しくても俺にそんなこと悟らせねぇ……フェルは自分で片を付ける。 「決断しろ、リッキー。俺たちだけじゃ手が回らない。ぐずぐずしてると間に合わなくなる」  俺は……とうとう承諾した。 (フェル、許せ……他にどうしようもねぇんだ……)   
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!