10.Happy Birthday !!!

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   フェルの差し出す腕に手を添えて、ホテルのレストランに向かった。 「ハワード様ですね?」  その声にフェルが「はい」と言う。案内された席で「いい」って言う前に椅子を引かれちまったから、恥ずかしいけど澄ました顔して座った。でも周りがみんなこっちを見るから、とにかくこっぱずかしい。 「ワインはリッキーが選んで」  そう言われて、スパークリングワインを頼んだ。最初勧められたブルゴーニュ・ムスー ピノ・ノワール セックをテイストしてみる。明らかに芳醇すぎて思わず「しつこい!」って呟いた。ワインリストからさっぱりしたイチゴ風味のスクリューキャップにしてもらう。これならアルコールって言ったってたいしたことねぇんだ。それに一杯しか飲ませる気はねぇし。 「きれいな色だね!」 「うん、これってさ、肉にも魚にも合うんだよ。お前、肉だろ? 俺魚だし。色、スーツにも合うからさ」 「やっぱりこういうのはリッキーだな。こういう所に来てもどこの令嬢にも見劣りしない」  きっと俺は真っ赤になってたと思う。フェルの目を見れなくって俯いちまった。 「リッキー……今夜は特にきれいだ……でも、明日は胸の開いた服で頼むよ」  そうだ、そう言われてた。毛皮のコート持ってきてんだから。  美味いコースを食べて、コーヒーになった。 「奥さま。ちょっとレストルームに行ってくる」  ウィンクして行くフェルの背中を目で追いながら、俺はぽっと熱い頬っぺたを撫でてた。 「失礼ですが、お名前を教えていただけませんか?」  振り向いたらやたらゴールドを身に付けてる男。金のかかったスーツにゴールドの時計、指輪、太いブレスレット。歯が金でもおかしくねぇくらいだ。  だいたい失礼だ、テーブルについてるカップルに声かけるなんて。 「お部屋はどちらですか? 花を贈りたいんですが」 「連れがいるんです」 「お相手は今どちらへ?」 「レストルームに行ってます」  俺にしたって、こんなとこで喧嘩したかねぇ。せっかくゆったりと奥さま気分なんだし。 「こんなに魅力的な人を放ったらかすなんて。ちょっと酔っているでしょう。良かったら冷たい風にでも当たりませんか? 夜景がとてもきれいに見える場所があるんです」  俺はついククッて笑っちまった。 「なにか……あぅっ!」 「僕の妻に何か? ご用件なら僕が承りましょう」  顔はにこやかで冷たい目。後ろに捻り上げた腕で相手は動けねぇ。 「し、失礼。お連れが帰られたかと……」 「こんなに美しい妻を残して?」  
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