じゅうたい?

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じゅうたい?

 『トーリィィィ……』  館内にスピーカーを通して木霊する声。それもたった一言。それを聞いて一人の若者が大きくため息をついた。  所長室にトーリは呼び出しを受けたのだ。トーリは諦めと苛立ちの混じった複雑な表情で部屋に向かう。  ここは佐竹発明研究所。所長の佐竹優介は発明家だ。彼の発明品は千を超える。だが彼名義で売れるような発明品はない。そして彼は世界有数の資産家だ。それゆえ研究所はとても立派で、たかが個人の研究施設なのに国家機関の重要な施設より近代化されている。  トーリと呼ばれた若者は研究所の「研究員」と言う名の助手。名は「華湯(はなゆ) 徹」だが優介は彼を「トーリ」と呼ぶ。理由は誰も知らないが、研究所では優介に倣い皆が「トーリ」と呼んで、今や本名を知らない者までいる。  そのトーリが何故に呼ばれたのか。呼ばれたトーリの足取りが重い理由は明白だ。優介の発明品の実験材料となるからだ。これはいつもの研究所の風景となっている。  ともあれトーリは所長室にやってきた。 「はあ。今度はなんです? 危険な事は勘弁してくださいね」  ため息と共に言葉が出る。     
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