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トーリの答えに大げさと思えるような仕草で大きく頷く優介だ。
「さもあろう。そこで私は発明したのだよ。」
優介は薄い胸板をそらし、「どうだ!」とでも言うように偉ぶる。貧相な体驅故にちっとも偉そうには見えないのだが……。
「なるほど。渋滞緩和の発明って事ですね?」
「何を言う! そんな事は簡単ではないのだぞ!? 多くの学者が渋滞緩和のために新たな路を造ったり、信号機のシステムを調整したり……」
「わ、分かりました、分かりました! で? 具体的にどんな発明なのです? 」
「ふふふ。やはり君も私の発明が気になるようだな」
(ええ、気になりますとも! 私が実験体になるのでしょうからね!)
「私の発明は渋滞緩和のものではない。都市の構造、人口分布の構造を根本から組み直さねば、緩和するのは無理に近い」
「? では発明と言うのは?」
「私の発明は渋滞に巻き込まれた際の精神を安定させる物なのだ。渋滞が社会のシステム上、避けられないならばだ。渋滞によって心身が受けるストレスを無くすと言う物だ」
「やっと話が見えてきましたよ。つまり、ストレスを軽減する発明品と言う事ですね?」
「ふう。やれやれ。君は人の話を良く理解できないんだなぁ!?」
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