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「亮太、私に嘘をついたでしょう!
拓也が私のことを好きみたいって言ったのは、嘘でしょう!」
僕は、言葉に詰まってしまった。
菜摘の怒りは収まらないようだった。
菜摘は、立ち上がって拓也の方に詰め寄った。
この時の菜摘は、怒りが爆発して、殺気立っているようだった。
そして僕は、菜摘が背中にまわした手に刃物を持っていることに気が付いた。
「菜摘、よせ!」
僕はとっさに叫んで、拓也をかばおうと菜摘の前に立ちはだかった。
すると、次の瞬間、僕は腹部に激痛が走った。
恐る恐る顔を下に向けると、僕の腹部に刃物が刺さっていた。
僕が力なく、菜摘を抱きかかえるような状態になると、菜摘が泣きながら僕の耳元でささやいた。
「私、亮太のことが好きだった!」
僕は、この言葉を聞きながら、意識がもうろうとしていった。
そして、夢で見た東京の夜景が僕の目に入ってきたが、やがて目の前が白い霧に包まれていった。
僕のついたささいな嘘が、このような事態を生んでしまったのだと感じた。
僕は、ゆっくり瞼を閉じると、真っ暗闇の世界に引き込まれていった。
きっと僕は、死んだのだと思った。
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