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が、エイッツラルグが何をするよりも早くオルカがその剣をナイフで弾いた。
血に濡れた顔でエイッツラルグを睨み、叫んでくる。
「邪魔を、するなっ!」
エイッツラルグは目を細めた。そして、嗤って娘に剣を振るった。
振るわれた剣をナイフで受け止めた娘だったが、力が拮抗しきる前にエイッツラルグがさらに踏み込み、押しきった。吹き飛ばされ、床を転がったオルカに、エイッツラルグは口を開いた。
「獲物を横取りされたくなかったら私を殺してみせろ」
オルカは咳き込みながら、エイッツラルグを激しく怒りのこもった目で睨み付けてきた。
それを見やっていた灯がエイッツラルグに肩をすくめる。
「容赦がないな、あんた。一応、鴉同士で仲間なんじゃないの?」
「生憎、そんな考えを私は持ち合わせていない」
「だろうね。いつか刺されるよ?」
灯はそう言って、肩をすくめた。
「それはともかく、あんたを相手にするのは骨が折れそうだな。でもまぁ、仲間意識が薄そうなあんたらと違って、猟犬には頼れる仲間が大勢いるんだよ」
灯がふっ、と笑う。
その瞬間、出入口と、裏の方から何十人という足音が響いてきた。灯の言葉から察するに、灯達だけでは制圧出来なかった場合の援軍だろう。
「あんたでも逃げ切れるかな?」
エイッツラルグは灯に向かって、冷ややかに微笑んだ。
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