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エイッツラルグは新たに現れた猟犬と戦闘を繰り返し、自身の武器が人間の脂で使い物にならなくなるほど死体を積み上げた。否ー恐らく死体だ。あまりに斬りきざみ過ぎて、相手の死など確認している余裕もなかった。
だが、状況把握は何処か冷静にしていた。銃声、剣戟、血と悲鳴、怒号ーまるで戦争のような戦闘の中、猟犬を始末していくのが最優先と定めていたせいかーいつの間にか、娘と共闘のような形になった。あくまでそう見える、というだけで実際は自身の武器の錆びになっていたとしてもお互い気にはしなかっただろう。
だから、エイッツラルグとオルカがホテルから同時に脱したのはただの偶然、奇跡のようなものだった。逃走経路が同じなのも事前に頭に入れていた為にー戦闘の疲れもあって深く考えないままー体が勝手に動いたに過ぎない。
二人がたどり着いたのは、港の倉庫街だった。時刻は深夜の一時半過ぎ。
手配した通りなら、二時にこの港へ逃走用のボートが一艘来る筈だ。通報されたとしても陸路よりは遥かに手配が遅くなると考えたのだがー猟犬が絡んで来ていることを考えると、上手く逃走できるかは五分五分だろうか。
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