第1記

13/14
前へ
/15ページ
次へ
母親がいないのは知っていたが、このネックレスがそんなに大事なものだったとは。 「まあこの部屋を見る限りただ事では無いのは確かだ。それにこのネックレスが森の中にあったという事は、龍馬はまだ森にいる可能性が高い。」 「ということは…行くんですか?」 「一刻も争う状況だからな。杉谷、お前もついてこい。今1人になるのは危険すぎる」 片岡さんは背中に背負った槍を俺の目の前にかざした。 「そんなんじゃ自分の身を守れないだろう。これを使え。」 そういえば俺が持っていたのは子供が遊ぶようなプラスチックの棒だという事を思い出した。端から見れば命知らずかただの馬鹿にしか見えないだろう。 「ありがとうございます。でも下に鉄の棒があるのでそっちを使いますよ。」 俺がそう返答すると「そうか。」と言いながら槍を背中に戻した。槍や包丁系の武器は好きじゃない。剣術を習った訳でもない俺にとって攻撃部分が決められた武器は俺の能力と相性が悪いからだ。 「じゃあ5分後に出発するぞ。準備ができたら先に外で待っていてくれ。」 そう言うと足早に1階に降りていった。自分の息子が死んでいるかもしれないのにあそこまで冷静とは。一度深呼吸をし、重い腰を上げる。そしてかつて龍馬の一部だったモノを一見し、俺は部屋を後にした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加