1人が本棚に入れています
本棚に追加
季節は春。三月某日のことだった。
「では、これより新たに来る新入生のため及び、これから一年間お世話になる自分達のために、学生寮の大掃除を決行する」
と高らかに宣言する、この学生寮の寮長である小野結月の声が寮内に響き渡った。
「各部屋はそれぞれが責任をもって掃除すること。あと食堂は叶多と琉、談話室は俺と颯真が担当する。ほかに風呂やトイレ、ベランダ、廊下など、細かい所はそれぞれ担当者をリストアップしておいたので見ておくこと。さあ、行動開始!」
もちろん不満、反論できる隙など皆無。
たとえ一般家庭だろうと学生寮だろうと変わりはない。一年間散らかしまくった部屋の大掃除をするのは、その部屋の主の義務なのだ。
というわけで、では俺は先に談話室の掃除にかかるので自分達の部屋の掃除を始めておいてくれと言われ、大和は渋々自分と結月、二人が住む寮部屋へと向かった。
「大和は細かいガラクタが多すぎる。この際思い切って捨てるように」
廊下の端から追い打ちをかけるようにそう言い放たれた結月の声に、隣を歩いていた叶多がくすりと笑いを洩らした。
「叶多~、笑い事じゃねえぞ」
「大和がいろんなものを持ち込みすぎるから悪いんだよ。自業自得って言葉、知ってる?」
「なに言ってんだよ。お前等の部屋だって本が山積みになってるじゃねえか」
「あれは全部颯真の分。僕は関係ないからね。片付けるのも怒られるのも颯真だけ」
「あー、さいですか」
ぷくっとむくれて大和は部屋に入っていった。
「で、これをどうしろというんだ。結月のやつ」
部屋中至る所に所狭しと乱雑に置かれている様々な小物達にゆっくりと手を伸ばしながら、大和が小さく毒づいた。
最初のコメントを投稿しよう!