1人が本棚に入れています
本棚に追加
「大和、これは? 手紙か?」
「どれ?」
それは大和にも覚えの薄いものだったらしく、大和も何だろうと首を傾げながら結月が差し出した手紙を受け取り封を開けた。
「……鄭くんへ……?」
白い便せんの冒頭に書かれていた文字を目で追い、結月が不思議そうに呟いた。
「……あ」
とたん、手紙の主を思い出したのか、大和がふっと笑みを見せた。
鄭というのは、大和の苗字である。
考えてみれば、大和のフルネームは、鄭大和なのだから、鄭くんと呼ぶ人物がいても特段おかしいはずはない。ただ、大和はいつも自己紹介をする時、自分のことは大和と呼んでくれということを言っており、あえて誰も苗字で呼ぶということをしていなかったのだ。それなのに。
そんな結月の考えを読んだかのように、大和がトンと肩で結月を小突いた。
最初のコメントを投稿しよう!