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大和の中の正義。もしかしたら、それはこういった子供の頃の不当な扱いのされかたにも理由があったのかもしれない。
すぐに皆とうち解ける明るさや朗らかさ。相手への気遣いの巧さは、もしかしたら大和自身気付いてはいない自衛手段だったのだろうか。
日本人ではない。
今まで気にもしていなかったが、確かにそれを気にする人々はまだこの日本には大勢いるのだろう。
「大変だったのだな……」
「でもないぜ。何だかんだ言ってもガキの喧嘩だし。ほら、喧嘩した後って今まで以上に仲良くなれるじゃねえか。昔は今みたいに陰湿なのもなかったから喧嘩もしやすかったっつーか」
そういって大和はもう一度へへっと笑った。
「でさ……俺、別に深い理由はなかったんだけど、その子にだけは鄭のほうで呼んでもらってた。他の奴らは全員大和としか呼ばせなかったんだけど、その子だけ」
「……それは、自分も同じだと、だから大丈夫なのだと彼女に伝えてやりたかったからなのではないか?」
「……どうだろう……そこまで考えてなかった」
でも、もしかしたらそうなのかもしれないと、大和は小さく頷きながら笑みをこぼした。
「その子は今、どうしているのだ?」
「知らねえ。結局両親の都合で中国へ帰っちまったから」
「……そうなのか」
「この手紙、その子が中国へ帰る前にくれたんだ。今まで有り難うって。鄭くんのおかげで、とても楽しかったって。日本が好きになれたって。有り難うって。何度も何度も言ってくれてさ……」
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