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「俺もその子の顔を見てみたかったな。お前が可愛いと言うのだから余程の美人だったのだろう」
「いや、なんつってもガキの頃の話だぜ」
「その子に好きだとは伝えたのか?」
「いいや。伝えてない」
「何故?」
「んなの好きだなあって自覚したのが、その手紙もらった後だったし……言いたくてももうその子は遠くに行っちまってたし」
「で、忘れられなくて、こんな所にまで持ってきているというわけか」
「ちっ……違うよ。実家に置いておいたら母ちゃんに見つかって捨てられるのがオチだと思っただけで……」
「…………」
弁解すればするだけなんだか墓穴を掘っているような気になり、大和はとうとう大人しく口を閉じた。そして開いていた手紙を大事そうに折りたたんで、封筒に入れなおす。
「その子に、ちゃんと伝えておけば良かったな」
「いまさら、だろ」
結月は、照れたように笑う大和をそっと優しげに見つめた。
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