いまになってみれば

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 駆け込み乗車はおやめ下さい、なんて文句は無視して、ぎりぎりセーフで電車に乗り込んだ。階段を走ったので私は息が上がっているというのに、男子二人は涼しい顔だ。さすが男子だなあ。 「お前さ、まだスマホ持ってなかったんだ。」 「え、まじで?まだスマホ持ってないの?」  こういう発言も聞きなれたものだ。 「うん。通信料払えるまでだめだってマ・・・お母さんに止められてて。高校入ったらバイトして、スマホ買おうと思ってたんだけど、部活入っちゃった。」 「へえ、えらいなあ。」  うんうん、と会田の友人がうなずく。 「間宮、何部?」 「合唱。そっちは?」 「サッカー。こいつも、小学校からのサッカー仲間。」 「はじめまして。鈴谷(すずや)です。祐の彼女さんの名前は?」 「彼女じゃないです。間宮です。はじめまして。」  彼女にしとけよーと鈴屋はからっと笑う。  中学の頃はそこまで仲の良かったわけではないが、不思議と話が弾んだ。中一の時の担任の話、クラスの誰彼の話、互いの高校での話。  そんな談話のうちに、鈴屋の乗り換えるひとつ前の駅になった。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加