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ところが、駅に着こうかというところで。
『お客様にお知らせします。車内点検のため、××線は運転を見合わせております。お忙しいところ・・・』
「やべえ、電車死んでる。」
つまり、止まってる。
「どうしよう。俺、今日携帯充電してなくて、死んでるんだよね。」
つまり、充電が切れている。
「俺、他の帰り方知らねえよ~。」
「・・・しょうがねえなあ。」
会田はちらりとこちらを見た。
「今から調べても間に合わねえし、俺、一旦ここで降りて、こいつの帰り方調べるわ。間宮は、このまま帰れるよな。
」
「あ、うん。」
「じゃあ、暗いし気を付けて。」
「いやぁ~ありがと佑ぅ~。」
「うるせえ、離れろ。」
抱きつこうとしてくる鈴屋を片手で押しのけながら、会田はスマホを探っている。
「いやあ、俺、お前がなんで中学でモテてたかわかったわ。優しいからだ!」
「知るかっ!」
「いや、だって、俺がお前だったら、お前のために駅降りてまでスマホいじってやろうと思わねえもん。それに、女子に『暗いから気をつけろよ!』的な気の利いたことなんか言えねえよ。」
急に顔に熱が昇っていくのを感じた。
会田がこっちを見ているのが分かるが、見返すことはできない。
「こいつ優しいよな、な、間宮さん。」
「あ・・・うん。」
ドアが開いた。
二人はもみ合いながら、遠ざかっていく。
と、会田の唇がわずかに開いた。
き を つ け ろ
そう言ったように、見えた。
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