いまになってみれば

8/8
前へ
/8ページ
次へ
   ***  高校に入って二度目の冬が来た。相変わらず、部活は忙しい。  あれ以来、というのは、一年前の電車のアクシデント以来、彼には会っていない。  でも、どこかで。   また、なにかが起こって、たまたま会うなんてことがあるんじゃないかと思っている。    ゛いやあ、俺、お前がなんで中学でモテてたかわかったわ。優しいからだ!”  知っている。  あの日、親切にしてくれたことは、彼の性格なんだと。  私だけが、特別なんかではないと。  それでも、彼のことは忘れられない。    一目ぼれ。    安っぽい言葉で表すなら、そうかもしれない。  でも、たった一度の親切で。  ましてや、中学が一緒だったというだけで。  今更「好き」などとぬかすのは、どこかおこがましいと思った。  あの時、ちゃんとお礼を言えばよかった、そう思いながら。  もう一度会いたいと思いながら。    あなたがが好きです  を口にすることはなく、  きっと、私は高校生活を終えるのだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加