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ichiru
――空が青すぎるので死にます。
あのジジイはこの一文を遺書とした。
――――
シンプルで意味がわからない遺書から始まった謎とも呼べない謎のような何かをすべて解明して振り返ると、ジジイは救いようのない大馬鹿野郎だったとの結論に行きつく。いまやジジイがひと呼吸のうちに消費していた酸素すら惜しい、くたばって清々するレベルだ。だが残念なことにこの随筆の中心に出てくるのはジジイのことで、俺はただの筆者にすぎない。
変なジジイと観測者たる俺の出会いと別れを書くだけ書いてみる。
書いたところで結論は変わらない。
ジジイは大馬鹿野郎だ。
――――
高校に進学すらしなかった俺が人生を浪費してネットゲーム界隈をうろうろしていた八月ごろのこと。
中学から続いた引きこもり生活にも慣れ、ほとんど昼夜逆転でゲームにのめり込んでいた。短剣符で名前を挟んだ思い出したくもない痛いハンドルネームはしかし、メールアドレスに使ってしまっていて、日夜いらないメルマガの受信用になっていた。
百人が百人クズと呼びそうな怠惰な生活に浸っていた俺のもとに、ジジイは現れた。
真っ昼間のクソうるさい工事の音を引き連れて。
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