3 表情が欲しい

12/12
前へ
/2280ページ
次へ
「笑えるようになれてよかったですね。ではお約束通り「代償」を頂きます。」 「はい」 「では、私はこれにて。」 頭の中で声がしたと同時に、私は現実に引き戻された。 福田さんが私に、話をしている。 「いいか、ミキ。社員は簡単な道のりじゃない。」 何だろう。 何かを忘れたような。 それが思い出せない。 安原は本を取り出して開く。 そこには、試験勉強をする女性の姿が映っていた。 「サトシっち。彼女から持っていった「代償」って何?」 タクの言葉に、私は答える。 「彼女が一番思い出したくない、『小学生時代の記憶』です。」 「・・サトシっち、優しいね。もしかしてミキっちが自分と似てたから?」 「・・・・。」 私は黙って本を閉じ、窓に強く当たる雨を見続けた。
/2280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

467人が本棚に入れています
本棚に追加