0人が本棚に入れています
本棚に追加
いつ死んだ?なぜ死んだ?
今の状況がもどかしい。生き返ることはないとしても、死んだ理由くらいは知りたい。妻と娘の様子から、死んだことには区切りをつけているようだ。死後どのくらい経っているのか?娘の姿は、昨日まで、いや前回見た姿と変わりない。ということは、一年は経っていない。外は暑そう。記憶はクールビズ用のシャツを着て仕事をしていたので、最長でも数カ月、つまり数日から数カ月の間?と、かなり曖昧ながらも、徐々に現状把握を進める。
まだ、夕刻。職場には人がいるはず。「そうだ、会社に行けば、より詳しくわかるはずだ。」と思ったと同時に、魂は会社にいた。瞬間移動?いや、移動を感じさせない場面の切り替わり。まるで漫画のコマのような変化だった。思った場面に移ることができるのかもしれない。であれば、死んだ瞬間に移れれば…。しかし、死んだ瞬間が思い出せない。それではと、一週間前の商談の場面を思い浮かべたが、移動できない。時間軸の移動は叶わないようだ。
俺のデスクの前にいた。記憶では、直前までここで仕事をしていたんだ。雑然としたデスクが並ぶ中で、俺のデスクだけが片付いている。そして、花瓶が。花瓶には、赤い花びらで花びらの根元の方が少し黄色がかった、あまり見たことがない綺麗な花が刺さっている。ということは、まだ後任がついていない。仕事は周囲に割り振られただろうが、欠員補充がなされていない。俺の仕事量は、二人分はあったと自負している。なのに、まだ、欠員補充がなされていないということ、そして花瓶の花…。死後1ヶ月は経っていないのではないだろうか?いいぞ、徐々に絞り込めている。でも、まだ死因には一歩も近づけていない。事件?事故死?病死?。1ヶ月も経たないうちに病死は…、いや、脳溢血や心筋梗塞ならあっという間だ。まだ、なんとも言えない。
最初のコメントを投稿しよう!