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暴れるポニーテールには全く気にしないのか、彼女は快活な笑顔を僕に見せてきた。
「ホントだ、仁じゃん」
「お久しぶりです、凛先輩」
僕は一応、後輩としての礼儀を重んじる。
山村凛。
彼女が僕の先輩の一人であり、文芸部の元部長である。
「おう、おひさおひさ! 元気してた?」
それなりに、と答えたいところだったけれど、正直に言えば精神的にはかなり参っている。
「仁くん。好きなところに座っていいよ?」
そんな僕の気持ちを察したのか、圭さんが席に着くように促してくれた。
こじんまりとした店内にはカウンター席、テーブル席がそれぞれ四つ用意されていたけれど、あいにく今は僕の貸し切り状態となっていた。
僕は圭さんの真正面に座れるカウンター席へ移動し、腰を下ろす。
そして、後輩の僕でも凛先輩はきっちりと水の入ったコップを出してくれた。
「へい、お待ち」
「凛先輩、いい加減に喫茶店のマニュアルくらい覚えましょうよ」
およそ定食屋かラーメン屋の掛け声になっている凛先輩に注意を促したけれど、彼女は無邪気な笑みを崩さず、僕に告げる。
「残念ながら、あたしは規則なんかに縛られない人間なんだよ。それは君がよく知っているのではないかね?」
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