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彼女の着ている制服は、市内でも有名な『岬女学院』という由緒ある女子高のものだった。
今どき階級社会なんて古臭い風習かも知れないけど、彼女の姿はまさにお嬢様といった出で立ちだ。
僕みたいな、一般的な公立高校の生徒とは一生無縁のまま彼女の生活は構築されているはずなのだ。
だから、これは決して、僕が突如出会った彼女に青春の鼓動を感じたとか、そういうわけではない。
僕は、彼女の秘密が知りたいだけなのだ。
いや、秘密なんて思っているのは僕だけで、存外彼女は、目的があってそのような行動を取っているだけなのかもしれないけれど……。
とにかく、僕は彼女の行動の真相を知りたかった。
揺ら揺らと頭を揺さぶるほどの傾斜道を、バスは進んでいく。
この市内にある『森林植物園』は、山奥に位置している。
何度も確認するように記述するのは大変憚れることなのだけれど、こんな時間から森林植物園に向かう人間なんて、僕のような居場所がない人間か、よっぽど植物に関心のある人物だと想像できる。
だから、彼女もそのどちらかの類の人間なのかと思うだろうが、そうじゃない。
バスは、次の停留所に停まるために、鈍い音を立てて速度を落とす。
僕は、彼女の行動を注視する。
そして、今日も彼女は――。
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