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SCENE1 春の息吹
「賀紙、新入部員がいなくなったら、文芸部は廃部だからな」
「はい?」
放課後、部活の顧問の磯野先生に呼び出されたと思いきや、開口一番、処刑宣告をされた気分になってしまった。
磯野先生は、僕の通う稲穂山高校に昨年赴任してきた新人の先生だ。
どういう経緯でそう歪曲されたのかは知らないが、生徒たちからは「フグタ先生」というあだ名が付けられて愛されている。
文芸部の顧問らしい細い線の身体に丸縁眼鏡、昭和を感じさせるそのルックスといえば誤解を招きそうな表現かも知れないが、見かけによらず先生は若干口が悪い。
いや、そんなことより先生の発言の意味を汲み取るのが先だ。
「あのー磯野先生? それってどういう意味ですか」
「そのままの意味だよ。もう部員は賀紙しかいないんだし、職員会議で決定したことなんだ」
「決定?」
「文芸部の廃部」
今度はきっぱりと、もう一度、磯野先生は同じ台詞を吐いた。
春休みを終えて、高校二年生になった僕は、どうやらまだ休みボケが残っているらしい。
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