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「無理ですよ。僕に入部案内で新入生に声掛けれると思っているんですか?」
「だよな」
こちらも簡素な返答をする磯野先生。
そこはもうちょっと励ましのあるメッセージを頂きたかったけれど、仕方がない。
むしろ『部員集め頑張ってくれ』と言われるほうが頭が痛くなる。
「じゃあ、そういうことだから宜しくなー」
磯野先生の興味は、僕から自分の机に置いてあるノートパソコンのディスプレイに移ってしまった。
僕はそのまま目線の合わない磯野先生に頭を下げて職員室を後にした。
もしかしたら文芸部の部室の鍵も先生に返さないといけないのだろうけど、どうせ蔵書の整理もするのだろうから、また呼び出されたときに返せばいいか。
しかし、困ったことになった。
今さら新しい部活に入るなんて、人間関係が構築されたコミュニティを破壊しに行くのと同等の愚行だろう。
かといって、アルバイトをするには学校からの許可が必要だし、その前に保護者の許可が必要で、僕の母さんは絶対に許してはくれないだろう。
「てめぇは家のことの心配なんてしなくていいんだよっ!」と、とても四十代とは思えない童顔な顔に眉間の皺が出来る母さんの顔が脳裏によぎった。
「さて、これから放課後はどうしようか……」
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