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僕は廊下を歩きながら必死に考える。
まだ文芸部の部室も使えるので、今日は部室で帰宅を促すチャイムがなるまで今後の予定を考えてみたけれど、これといって打開策は固まらなかった。
それに、先輩たちがいなくなって、この部室もなんだか雰囲気が変わってしまったような気がする。
僕があんなに居心地の良いと思っていた場所だったっけ? と、形容しがたい不安が襲ってくる。
きっと、僕はこの場所さえもいつしか『自分の居場所』として定義できなくなってしまうのだろう。
ダメだ。
この場所は、先輩たちとの想い出が多すぎる。
僕にとって、新しい居場所を探さなくてはいけない。
そんな焦りが、じっとりと僕の身体をつたっていく。
まるで今までのしっぺ返しを食らっているような気分だ。
僕、賀紙仁には親友と呼べる存在どころか、友達と呼べる人間もいなかった。
人と仲良くなることが乖離的に不得手だったのだ。
人見知り、という言葉で括れば楽なのかもしれないけれど、僕はそう表現するより自分のことをぴったりと表す言葉を知っている。
人と関わりを持つのが怖い、ただの臆病者。
それが、僕、賀紙仁を表す言葉だ。
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