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姉さんは、1年前、公子様と1度だけ、2人きりになったことがある。
それは知っていたけど、まさかそこでラブラブしていたなんて。
後になって考えてみたら、ありえない話じゃないんだよね。
公子様は、姉さんを森の中にある泉の近くに誘ったんだって。
そこで姉さんにこう言った。
「アッティー、君が私のことをどう思っているのかは知っているつもりだ。だから、君は今まで通り、私や私の家族を見守ってくれればいい。だが、それでは君ばかりが傷ついてしまう。それが私には耐えられない」
姉さんは、こう返した。
「公子様からお給料はいただいているんです。傷ついたって平気ですよ」
でも、公子様は引き下がらなかった。
「私も男だ。黙って君に守られていることなど、できない。私に、君を守らせてくれ」
「何を言っているんです? 公子様。ご自分の身を守るすべを持たないから、私がいるんじゃないですか」
姉さんは呆れかえってしまった。
公子様が世間知らずだって、そう思ったみたい。
でも、公子様は、そうじゃないって、そういう「守る」じゃないって言った。
「君が私たちの護衛をする以上、社交界への参加も義務になってくるはずだ。その時、君が誰かに言葉や態度で傷つけられないよう、守りたいのだ。それくらいのことは、やらせてくれないか」
姉さんは、断りきれなかった。
公子様が自分をどれだけ想ってくれているのか、分かっちゃったから。
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