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公子様は何かのカギを、謎の馬車の中にある鍵穴に差し込んだ。
そして、力を込めてグイっと回した。すると、それはけたたましい音を立てて大きく震えだした。お尻から何か黒いものを吐いている。
「びっくりしたあ! 本当に動いた。すごいすごい!」
姉さんは興奮気味だ。かくいう私も結構興奮している。
いま、この乗り物は自分で動こうとしている。でも、御者は誰なんだろう。どうやって動くんだろう。
「公子様、この乗り物に御者は要るんですか?」
「御者は要らないけど、これを運転する運転手は必要だね」
公子様はそう答えて、少し考えているそぶりを見せた。
もしかして、この乗り物を運転できる人、このなかに、いない?
公子様の答えは、予想通りだった。
「誰か、運転できる者はいないものか」
だけど、誰一人手を挙げない。
ここに屋敷中の人が物珍しさに出てきてみているのに、誰一人いない。
「先進的すぎたかな」
公子様は、そう言って照れ笑いをした。
分からないわけじゃないけど、これすごく大きな買い物だと思うんだよね。
大丈夫なの、公子様?
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