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「えー、遥はあげないよね?」 「うん、どっちかと言うと貰う方じゃない?」 どちらと言うまでもなく皆勝手に答えを見つけて納得している。 私は乾いた笑いを返す。 短い髪の毛に、猫みたいな瞳。 ピンクやオレンジみたいな明るい色は好きじゃなくて、スカートを履くのも苦手だ。 この中学が制服のない学校で本当に良かったと思う。 小学生の頃は遥くん《・・・》と呼ばれていた。 中学に入ってからは呼ぶ方も恥ずかしくなったのか、自然と呼び捨てに変わったが。 私のことを「ちゃん」付けで呼ぶ女の子は、そうなんだねと愛らしい笑みを浮かべる四宮亜里沙(しのみやありさ)ちゃんだけだ。 「ごめんね、変なこと聞いちゃって」 「ううん。気にしないで!私は…あげるなら貰う方が良いかな。甘いの好きだし」 止めていた手の動きを再開しようとする私に、亜里沙ちゃんは尚ボールを投げてくる。 「そしたらね、お願いがあるんだけど…。いいかな?」
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