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「キララさんは、今日は仕事はどうされますか?」
さつきがおねえに聞く。
「今日はラストまでよ。しばらく、あなたたちとシフトを合わせるわ。」
おねえはサッと立ち上がった。さつきとキララをいつまでも隣同士で座らせておきたくなかったのだろう。合わせてコビトの三人も立ち上がる。
「何かあってはいけないので、今日から護衛します。」
さつきが言って、二人に了解を取るようにうなずいてみせた。
「ただ護衛の方法について相談したいので、今日の仕事が終わってからでいいですか? もちろんその間に何かあれば、対応はしますけど」
さつきが続けて言ったのを聞いて、時羽がホッと体の力を抜く。さつきが三人で相談する猶予を作ってくれたからだ。
「必要な物もありますので、一旦外に出ますね。いいかしら? オープンに間に合うように帰ってきます」
時羽がおねえに聞く。おねえは(もう行ってもいいわよ)というようにヒラヒラと手を振った。
キララとコビトの三人が、おねえの部屋から出ていこうとすると、おねえはさつき一人を呼びとめた。
「分かっているわね? キララには気をつけて。距離を取って接してちょうだい。」
おねえはさつきにだけ聞こえるように、小声で耳打ちした。
さつきは顔がおねえの目をのぞき込んで、黙って頷いた。
おねえはちょっぴりドキドキしてしまったが、素知らぬ顔をしていた。マネージャーという立場上、スタッフにときめいたりしてはまずい。
おねえはウキウキした気分で自分のデスクに座って引き出しを開けたので、時羽がチラッと部屋の方を振り返ったことには、気付かなかった。
時羽は扉を閉めながら、空気をパクリと食べた。
誰のものでも、ときめいている時の気持ちは美味しいのだ。
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