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オレンジ色に染まってきた太陽の日差しの中を、三人は急ぎ足で歩いていた。
「何も外に出なくても、おねえの部屋を貸してもらえばよかったんじゃない?」
白雪は二人を近くのドーナツショップに案内しながら首をかしげた。
時羽が二人をちょっと外で話そう、とチルトゥルから誘い出したのだ。
「ここでいいかしら?」
白雪が足をとめたのは、材料にこだわった懐かしい味わいと派手すぎないがインスタ映えする飾り付けのドーナツが人気の店だ。
午後四時すぎという時間帯なので、ドーナツが並べられたカウンターの前には、少し人がいるものの店内には空いているテーブルが目立っていた。
素材重視とはいえ、ドーナツは柔らかいパステルカラーのアイシングやイチゴパウダーや生クリーム、色とりどりのチョコレートで飾られている。
「私はベリーベリークリームとアメリカン。」
ショーウインドウをちらりと見て、白雪が頼む。生地にもイチゴパウダーが入っているらしく、ほんのりピンク色のドーナツに、生クリームと生のイチゴがトッピングされている。
「ええっと私は、この天使の冠で。それからカフェオレ」
さつきは期間限定の真っ白なドーナツを頼む。白い生地のドーナツに、さらにホワイトチョコテイストのクリームがとろりとかけられて、やはりホワイトチョコレートで作った羽根が刺さっている。さらにその上に金粉がキラキラと振りかけられてシンプルながらも華やかだ。
「どうしようかな……」
時羽は三十種類はあるドーナツを前に、どれにするか決められないらしい。
木のトレーの上に二人が選んだドーナツが乗せられてきたのを見て、やっと決まった。
「シンプルフレンチと、レギュラーコーヒーでお願いします。」
さつきと白雪は、店の奥の方のテーブルに座って時羽を待っていた。
「やっぱり!」
時羽が持っている木のトレーを見て、白雪が嬉しそうに言う。
「私とさつきちゃんがチョコ系とクリーム系だから、時羽ちゃんはプレーンだと思っていたのよ。」
「だってバランスが、ね。」
と時羽はトレーを丸いテーブルに置いた。
さつきと白雪が自分のお皿を、時羽のトレーに乗せる。
「三等分は難しいねえ。四等分にして、一個多い分は頼んだ人が食べればいいかな?」
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