吉田氏の愁いはブラックコーヒー

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 と言うと、時羽は手早くきれいにドーナツを切る。ひょいひょいとドーナツを入れかえて、三種類のドーナツが一皿に乗るように組み替えた。  「さてさて。ゆっくり味わいたいのは山々なんだけど、残念ながらあまり時間がないね。食べながらになっちゃうけど、時羽、どうだったか教えて」  言い終わると、さつきはシンプルフレンチを口に運んでモグモグ食べ始めた。  「ええとね。まず何しろおねえのデスソース味が強烈で、あまりよく分からなかったの。  でもね、なんだかおかしかった。キララちゃんの感情はね、クリームソーダ味だったの」  「クリームソーダ?」  「そう。おかしいでしょ? ストーカーに狙われてるなら、怖がっているとか気持ち悪いとか、美味しくない気持ちなのが自然だよね。」  「どういうこと?」  「ただね、おねえのデスソース味で、細やかな味が分からなかったの。だからもしかしたら、クリームソーダ味だと思ったのは間違っているかも。  とりあえず、おねえにもキララさんにも聞かれずに、皆で相談したかったから、お店の中じゃなくて、外に出てもらったの」  「時羽ちゃん、なんだかおかしかったものねえ」  「うん。変だった」  口々に言われて、時羽は苦笑した。  「この依頼、受けていいものかどうか、迷っちゃって。」  時羽は肩をすくめる。「天使の冠」にフォークを突き刺して、パクリと食べる。    「でも……。もし本当にストーカー被害に合っているとしたら……」  自分の両親がストーカー絡みで亡くなっている白雪の目に、不安そうな影がよぎる。  「白雪、心配しないで。ちゃんとやるから。ストーカーの正体を突きとめる、っていう依頼だからね」  時羽が優しく白雪の手を叩く。  「さあ。私達の守護神が来たわよ」  さつきがサッと立って手を振る。よれよれのティーシャツに、チェックのシャツを腰に巻いた男性が、嬉しそうにやってきた。  「吉田さん」  白雪が嬉しそうに目を見張る。  五人目のコビトの吉田氏は嬉しそうな白雪を見て、さらに嬉しそうに笑顔になった。      
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