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「待っていたわよ。さ、こちらがコビトの探偵事務所の子達よ」
三人がマネージャーの部屋に入っていくと、おねえが時羽とさつき、そして白雪を、キララに手で指し示した。
「白雪のことは知っているでしょ?」
おねえがうつむいているキララの顔をのぞき込む。
「はい。でも皆さん、知っています。羽さんに、さつきさんですよね」
キララは顔をしっかりとあげて、三人を見た。「羽さん」というのは、チルトゥルで使っている時羽の源氏名だ。
時羽はほんの少し目を見張った。仕事上の絡みが多いウェイターのさつきだけならばともかく、まだチルトゥルで働いて日も浅い自分の事を、顔だけではなくて名前まで知っているのが意外だったのだ。
「知っているなら話は早いわね」
おねえが早口で言う。他のキャストが来る前に話を終わらせておきたいのだろう。
「座ってちょうだい」
キララとコビトの面々にソファに座るように促す。もともとキララとおねえが向かい合わせに座っていたので、キララの隣にさつきが座り、おねえの隣に時羽と白雪が座った。
「さ、じゃあお話して」
おねえがキララを急かす。
キララは一つ息を吸い込んでから、話し始めた。
「ストーカーに狙われているんです」
一ヶ月程前から、姿は見たことはないが、誰かがつきまとっている気がするのだとキララは言った。
チルトゥルのお客様が、途中からストーカーになってしまうことは珍しくない。
「犯人は、チルトゥルのお客様なんですか?」
「それが、違うの」
キララの代わりに、おねえが答えた。
「犯人の心当たりがないんですって」
さつきと白雪はさっと時羽を見た。けれど時羽は少し厳しい目をしていたものの、顔には何も浮かんでいなかった。
時羽は、人の感情を味で感じる。マズイ味がする時には、ウゲッという顔をするのですぐわかる。
キララが恐怖やストーカーに嫌悪感を感じているなら、不味い味がしそうなものだ。
さつきと白雪は顔を見合わせた。いつもならこんな時、時羽が詳しい話を聞き出してくれる。けれど時羽は黙っているので、白雪が口火を切った。
「それで? ええと、私達は何をすればいいんでしょうか?」
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