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「そうね。まずは犯人を見つけて欲しいの。それからどうするかは、それから考えたらいいんじゃないかしら?」
とおねえが顎に人差し指をあてながら言った。かわいらしいポーズだが、残念ながらおねえがやると違和感が漂う。
「あと……、あなたたちも女性だから無理ならいいんだけど、犯人が分かるまでキララを護衛して欲しいのよ」
「分かりました。でも場合によっては危険が伴う内容ですから、通常よりも料金は高くなりますが、よろしいでしょうか?」
さつきが言った。
「それでいいわ。もしかしたらお店がらみかもしれないから、とりあえず犯人がはっきりするまでは、お店から料金は支払うから。それでいい?」
おねえが言う。
さつきが頷くと、さつきの隣に座っていたキララがさつきを見て笑顔になり、両手でさつきの手を握った。
「よろしくお願いします!」
「護衛はいつからお願い出来る?」
キララの様子におねえが眉をひそめながら聞く。
チルトゥルのウェイターは全員、男装の女性だ。おねえによると宝塚方式なのだという。
お店での恋愛は禁止だが、キャストにトキメキと癒しをあたえるのが、女性ウェイターの役割なのだ。
さつきは長身でスタイルがよく、さりげなくキャストを助けてくれるので、人気が高い。
おねえはウェイターの賃金ランクA、Bのうち、さつきをAに指定していたが、特別に高額な給料のSランクに指定しようかと検討している程だった。
チルトゥルでも人気があるウェイターのさつきとキララが必要以上に親密になるのは、おねえとしては避けたかった。
(今日から護衛に入ると言われたら、そのあたりの事を、後でコビト達と打ち合わせをしなくては)
おねえは心の中にメモした。
時羽がさりげなく息を数回吸い込む。さつきと白雪が気が付いて、時羽に視線を送る。時羽は目立たないように首を振った。何も分からないらしい。
さつきはポンポン、とキララの手を優しく叩くと、その流れでキララに握られたままの手をそっとひき抜いた。
(まあ。さつきちゃん、さすがねえ)
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